らいちゃんの人生墜落日記Part2

主にVintage Crown/Ureiアンプ修理が得意な、オーディオ機器修理人です。(他社もOK)他ではまず無い濃ゆい映像機器ネタあり、きゃりーぱみゅぱみゅさん、YOASOBIさんの大ファン。

昔のお仕事のお話

ホイストというのはおおむねホイスト式天井クレーンで使用されるための巻き上げ機として使用されます。
下限は500Kg、上限は30tくらい、だいたい20tまでならホイストが多いです。それを超えると従前はクラブ式と言われるもので、モーター、ブレーキ等を別々に購入して組み立てるものが殆どでした。コンパクトにメカが纏めてあるホイストに比べ当然費用も掛かります。
でした、というのはインバータホイストが進化しすぎて、ローエンドのクラブ市場を食っている状況な訳です。
大型ホイストの欠点は巻上速度が遅くなる事で、30tの12m揚程ならばフックが降りてくるのも相当時間が掛かる状況でした。しかし、インバータ化することで無負荷〜軽負荷ならばインバータを高速運転させて巻上速度を早くすることで、この難点を解決させるというものでした。
重量物はたまに吊る、殆どは軽負荷という現場にはこれが受けたようです。
さて、昔話ですが初期のインバータホイストは汎用インバータをカスタムしたものを積んでいて、上限リミットスイッチを切るとインバータがトリップしてしまい下降させるのに少々お待ちください状況でした。同様の理由でインチング操作もできません。ホント使いものにならん機械でした。インバータは初期のトランジスタインバータでした。
電機品の艤装も多く、まるで軍艦か何かのような大層な代物・・・の割に使えない(使うのに気を使う!)。
その次に出たモデルでは普通のホイスト同様にかなり使えるところまで改良されていました。
ただ問題はモーターに比べて、まだかなり大きいインバータを積んで対処していました。この頃はやっとIGBTインバータになりました。電車と一緒やん、という感じです。それとともに「まともに使えるようになったな」と。
この頃になるとインチングもかなりOK、リミットガチャ切りもOKで、どうせモーターにパルスエンコーダ積むんだからとリミットスイッチ直前で減速させる機能が付きました。ついでにフック位置も下限で自動停止させる機能もつきました。
ワイヤー交換がユーザーではしにくくなりますが。(ホイストの制御基板操作で簡単に解除できる)
この世代ではまだ屋外での使用は不可、粉塵環境もNGでした。
この次の世代でインバータがふた周り小さくなり、汎用とはいえ制御盤に納めることが可能になり、屋外対応を正式に表明。
アンタ無茶やろ、と思いつつも屋外で使っている顧客が増え始めました。
この次でようやくインバータを専用化して小型化。この辺は同一電機メーカー内での確執があったようです。
他の部署に上から目線で対応されるのは嫌だから自分とこで作りたいという事ですな。
頼まれるインバータ屋は「なんでそんなもんのためにファームウエアを作らんといかんのだ」というところでしょうな。
この小型化でようやく見た目も普通になり、お値段も相当お安くなりクラッチ付きの二重速ホイストを買うよりこっちがいいという顧客も増えてきましたね・・・。
二重速ホイストは使用頻度が高いと数年に1回ブレーキ・クラッチ周りを全分解してのメンテナンスが必要でしたから、その費用がかなり高額でした。
これらの進化が1、2年の間で、すべてパワー系半導体の進化によるもので、小型化の割に大電流対応できたというのが大きいです。
こっからまださらに進化しているようですが、その頃私はその業界を離れました。高所から落ちて死ぬ可能性のある仕事はやっぱ嫌ですよ。(汗)
ちなみに汎用のホイストからインバータ式ホイストへの更新ですが、電気品の追加が相当増えるのでトータルで見るとかなり費用アップになる可能性が高いです。
既存ホイストの改造という声も良く聞きましたが、費用と安心面では新品を買うに越したことはありません。