らいちゃんの人生墜落日記Part2

主にVintage Crown/Ureiアンプ修理が得意な、オーディオ機器修理人です。(他社もOK)他ではまず無い濃ゆい映像機器ネタあり、きゃりーぱみゅぱみゅさん、YOASOBIさんの大ファン。

本当に「アンプの音に差は無い」と言い切れるのか?

どこぞで「アンプの音に差はない」とか言い切っている動画がありました。
コメント欄は大荒れ。動画の雰囲気が某ケーブルのアレに良く似ています。
周波数特性とかの測定もあんま意味ないです。アンプでたかが音声帯域の音が出せないのは機器として終わっています。個人的見解としてアンプ修理屋としてのバイアスをオフセットしてゼロにしても「ありえない」ですよ。
特に民生機の古いアンプの音は、メンテを少々しても劣化があり、製造当時の音が出てないと考えられます。
その辺をズバッと切るのは良いんですが、経験上やっぱり同じと断言するのはとてもあり得ない事なんです。
民生機には値段を吊り上げる為の無駄なものが多いので、無駄のない業務機で音楽再生に使えるものを私は長年お勧めしております。
理論として、スピーカーは振動板。これを動かすには相応の電力が必要。
軽く動くものにはそれほどのパワーは要りません。但し、振動板を動かすと原点に戻ろうとする機械的な力が働きます。これはスピーカーという用途としては好ましくない動きであり、逆起電力も僅かに発生します。これに負けず、振動板をきちんと制御しきれるアンプが必要なのです。鳴らしにくいと言われるスピーカーはそもそも振動板が動かしづらく、それに対してアンプが非力なので振動板の駆動が十分行えない、という事です。日本ではYAMAHAのNS-1000Mが最も代表的で、他にはヨーロッパ系のスピーカーに多いです。
ダイアトーンもそうなんですが、まともな音が出たダイアトーンはついぞ聴いたことが無いです。
クロスエッジでも硬化しているものが多いですから。
解決としては、密閉型でなくバスレフ型にする、これだけで低域は出るようになります。
しかし緩めの締まりの無い音になりがちです。
密閉型をバチクソ駆動できると目が覚めるような音が出ます。NS-1000Mがバスレフみたいに鳴る世界って凄いですよ。小型の鈍器系スピーカーは低域が物理的に出ないのでローブースト必須ですが、これまた面白いものです。
「このサイズでこんな音が出るの?」って感じですね。
なお、スタジオ用の名機、NS-10Mは用途が違うのでいくらぶち込んでも低域は絶対出ません。アラ探し用のモニタースピーカーですので。
余談ですが、CROWNのDC-300Aはヒビノ様のコンサート用パワーアンプとして同社のPAの音質を大きく向上させたアンプと、同社のHPに記載がありました。
そして、このDC-300シリーズははそもそもオーディオ用パワーアンプではないのです。
だから保護回路も一見不十分なのですが、実はもともと家庭で使うものじゃないですから。
説明書を見ると「スピーカー保護用にヒューズ入れて下さい」とか書いてあります。
でも、本来は電源装置とか、振動試験用とかの用途に使う機器として作られたものです。
PS-400のOEM版でボーイング社の資産ラベルが貼られたものが過去ありましたが、振動試験で使用されたものかと思われます。振動試験ではスピーカーの代わりに前後に電磁石でピストン運動するような装置が接続されたものと考えられます。
またMacro-Tech10000というモデルが密かにありまして、モノラルアンプなんですがOEMとして、主にMRI装置に使用されていたようです。もちろんオーディオ用途としても使えるものなのですが。
このような用途に使用されるものは容量の有る電源さえ準備すればスペック通りの仕事をする事が当たり前なので、民生の見栄え100%全振りのふざけたアンプなど相手にならない訳です。
なので、私は電源がとても大事といつも提唱している訳です。必要十分でいいので。
重さは必要ないですが、性能に見合った必要十分になると、それなりに重たくなるのは必然です。
その代わり仕事に関係しない部分はペナペナだったり、パネルが如何にもメカメカしくなります。
業務用として使われるものなのでそれが当たり前なんですけどね。
CDやアナログレコード、カセットテープなら外部からの振動による影響は出ますが、パワーアンプでそれはまず考えられないです。なので無駄な重りとか貼っつけるのは絶対ありえないです。そういった行為で音質は変わるかも知れませんが、こういった機器は音質より性能と信頼性が絶対です。性能と信頼性に重きを置いた結果、音質も良い、という結果になる訳です。とても明解です。
またオーディオメーカーの作るアンプは、特にオーディオ全盛期のものはローエンド機種は特に手を抜いて、というか戦略的に性能を落としてあります。だって上位機種が売れなくなりますからね。比べた結果、「ああ、やっぱり安価な機種は駄目だね」という基準のためには必要になりますから。
そして適当に壊れるように作り、5~10年程度で買い替えサイクルを起こさせるようにしないと商売にならん訳です。なのでD-75Aは民生機キラーと言われたんですよね、あのD-75Aですら。
私からすると、アンプを1Uサイズに無理に押し込んでいるのでちょっと電源が弱いと感じるのですよね。
それは低域の駆動力にモロに出てきます。D-75AとD-150Aは回路は基本同じですから、比較すると「そこしかないな」となる訳です。